就職活動や、会社の昇進試験では、時事・経済に関する筆記テストや面接での質問があります。普段から新聞を読む習慣のある人なら良いですが、そうでない人もかなり多いと思います。
本記事では、そんな人に向けて最近の時事・経済キーワードを解説します。
本記事で登場するキーワードをすべて完全に理解することは難しいですが、最低限、あなたの就職したい業界や、勤める会社に関連するキーワードは抑えておきましょう。
本記事で解説するキーワード
・Libra
・TPP11
・G20
・通貨スワップ
・タックスヘイブン(租税回避地)
・米中貿易摩擦
・邦銀の海外事業展開
・保護主義
・アジア開発銀行(ADB)とアジアインフラ投資銀行(AIIB)
本記事に関連するおすすめの書籍
Libra
Facebookが中心となって2019年に公表したデジタル通貨です。運営メンバーにはFacebookの他、UberやSpotifyなども参加を表明しています。
Libraは、デジタル通貨の中でも、「ステーブルコイン」と呼ばれるもので価格の安定化が図れることがメリットとなります。ビットコインのように価格が乱上昇、乱降下し投資やギャンブル目的での利用を避け、国外への送金や宿泊、交通手段の支払いとして利用することを目的としているのが特徴です。
Libraが価格変動しにくい理由として、Libraの発行団体が「常に発行されているLibraの総価格よりも多くのリザーブ資産を保有しておく」と明言していることが挙げられます。これにより価格が上下動したときに、Libraを買い戻したり、追加発行したりすることで価格を適正に保つことが可能となります。
Libraが注目されているのはその発行目的が特殊だからです。LibraはBitcoinのような従来の仮想通貨と違い「全世界の約1/3の銀行口座を持たない人に金融サービスを届けるための手段」として発行されます。銀行口座がなくても、スマートフォンがあればLibraを使った売買が可能となります。
その一方で、デジタル通貨特有の各国の金融政策に縛られず、金融政策が通用しない、個人情報の流出、資金洗浄に使われるというリスクからいまだサービスを延期しています。
Libraの特徴
- 価格変動が起きにくい
- シンプルで国境のないグローバルな通貨と金融インフラの構築」を目指している
- 世界中の人が金融サービスを受けられるようにすることを目的としている
↓参考記事↓
TPP11
TPPといえば皆さんも何年も前から耳馴染みのある言葉だと思います。TPPとは環太平洋パートナーシップ協定の頭文字をとった言葉です。TPPはもともと12カ国が参画していましたが、2017年にアメリカが離脱し、11カ国になったことからTPP11と呼ばれています。
TPP11とEUを合わせるとそのGDPは全世界の35%にもなります。アメリカのGDPは世界の20%、中国のGDPは世界の13%程度なので、TPP+EUの持つ経済力への影響の強さが図り知れます。
なおTPP11は参加国全体で、最終的には99%の品目の関税撤廃を目指しています。これにより企業にとっては輸出の後押しとなり、個人にとっては輸入品をお手頃な価格で購入できるという恩恵があります。なお日本はTPP11によりGDPが+8兆円、雇用が+46万人増えるという試算をしています。
TPP参加国
日本、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム
G20
G20とは、Group of Twentyの略で、主要国首脳会議のG7と、EU、ロシア、および新興国の計20か国からなります。
G20は金融・世界経済に関する首脳会合で、G20発足のきっかけは1997年のアジア通貨危機にまでさかのぼります。アジア通貨危機を受けG7財務大臣の会合でG20創設が決まりました。当時のG20は財務大臣での会合でしたが、リーマンショックを受け2018年に首脳級の会合に格上げされました。
元々は、金融・世界経済に関する会合でしたが、近年はその範囲も拡大しています。今では、経済・貿易・気候変動・エネルギー・保健・テロ対策・移民・難民問題も扱っています。2019年には日本の大阪で、G20大阪サミットが行われたことが記憶に新しいです。
G20参加国
アメリカ合衆国、イギリス、フランス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、EU、ロシア、中華人民共和国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ共和国、オーストラリア、大韓民国、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、アルゼンチン
通貨スワップ
通貨スワップとは、各国の中央銀行(日本の中央銀行は日本銀行)が金融危機や通貨危機に備え、金融市場の安定化のために必要な資金を互いに融通し合う制度です。日本のスワップ相手国としては、韓国・中国・インドが有名です。
韓国とのスワップは2001年に運用開始されました。しかし2015年に一度外交悪化が原因で打ち切りとなっています。その1年後の2016年に再度スワップの検討が開始されましたが、2017年に慰安婦像設置問題でまた協議が中断しています。
中国とのスワップは2002年に締結されましたが、2013年には尖閣諸島問題で執行となっています。しばらくたった2018年に上限3.4兆円で再開合意しています。
インドとは2018年に、3年ぶりにスワップ協定が再開されました。その規模は約750億ドル(81兆円)にも及びます。
以上のように近年のスワップは、本来の「金融市場の安定化」もさることながら「外交の手段の1つとして」の役割が強くなっているように感じます。
タックスヘイブン(租税回避地)
タックスヘイブンとは法人税や所得税が低い国や地域のことを指します。カリブ海のケイマン諸島、シンガポール、香港が有名です。多くの企業や個人が税金の少ないこれらの国や地域に移動しています。またオランダ、アイルランドも企業の優遇措置を適用し、海外からの投資を呼び込んでいます。
法人税や所得税が低い国に個人や企業が移動すること自体は何の問題もありませんが、税逃れを目的にこれらの地域に架空の企業を設立し実態を隠していることが大きな問題となっており、脱税やマネーロンダリングの温床になっています。
経済協力開発機構(OECD)はCRS(Common Reporting Standard)という制度を策定し、参加国同士で自国の金融機関に外国に住む顧客の口座情報を共有できるようにすることで、税逃れを防止しようとしています。
米中貿易摩擦
米中貿易摩擦とは、その名の通りアメリカと中国の貿易における関税の報復合戦を指します。
2018年7月にアメリカから中国に対して、産業機械・電子部品のアメリカへの輸入品にかかる関税を引き上げました。続いて同年8月、翌年2019年の5月と9月に追加でアメリカへの輸入品への関税の引き上げや、流通の制限をしています。
その中でも有名なのが2019年5月に行われた、ファーウェイに対してアメリカ通信ネットワークからの排除です。また2019年9月にトランプ元大統領は「中国は知的財産をアメリカから盗み、そしてそれを続けようとしている」と発言し、中国への怒りをあらわにしています。
上記の関税引き上げやアメリカ市場での流通制限の対応として、中国もアメリカからの輸入品に対して都度関税の引き上げを行っています。アメリカと中国という大国の報復合戦に日本をはじめとした周辺各国も経済的に巻き込まれている現状です。
邦銀の海外事業展開
日本国内はマイナス金利政策により、銀行にとって日本国内市場の収益は悪化しています。その影響を受け、日本銀行企業の海外事業展開が加速しています。
先頭に立っているのは三菱UFJ銀行で、2013年にはタイのアユタヤ銀行の株式の70%を取得。2017年にはインドネシアのダナモン銀行の株式の94%を取得しています。三井住友銀行は、2015年にカンボジアのアクレダ銀行に出資しています。みずほ銀行は、ベトナムのベトコムバンクの株式の15%を取得と追随しています。
以上のように日本のメガバンクは続々と海外へと事業を展開しており、とくに東南アジアへの投資が盛んです。株式投資の世界では銀行は景気の影響を受けにくい安定した株として好まれていますが、各社世界各国の銀行への投資を進めていますので、どの国のどの銀行に出資しているのかも、個人株主にとっては重要なニュースになっています。
保護主義
保護主義とは、自国産業の保護や貿易収支の改善を優先する考え方で、自由貿易の反対に位置する考え方です。アメリカのトランプ元大統領がこの考え方であったことは有名です。保護主義の主要な政策としては以下の3つが挙げられます。
- 関税の引き上げ
- 輸入量の制限
- 為替管理の強化
保護主義の歴史を紐解いていくと、1929年の世界恐慌をきっかけとした一連の流れが有名です。世界恐慌後、アメリカは輸入関税を引き上げました。またイギリスやフランスは、自国の植民地圏からの他国の締め出しを行っています。
しかし、これをきっかけにファシズムが台頭してしまいました。この反省として1948年にはGATTが締結されました。
GATTとはGeneral Agreement on Tariffs and Trade(関税及び貿易に関する一般協定)の頭文字で、関税引き上げ操作などの貿易制限を廃止し、自由貿易を国際的に推進することを目的に制定された国際規定です。
アジア開発銀行(ADB)とアジアインフラ投資銀行(AIIB)
アジア開発銀行(ADB)はアジア、太平洋圏の貧困問題削減を目的として1966年に設立されました。本部はフィリピンのマニラに位置しています。日本、アメリカが最大の出資国で、それぞれ15.6%ずつ出資しています。
一方で、アジアインフラ投資銀行(AIIB)は、日本とアメリカが主導するアジア開発銀行(ADB)に対抗する銀行で、中国が主導しています。アジア、欧州、アフリカを結ぶ一帯一路計画を支えることを目的に2016年に設立され、2019年には加盟国は100カ国に到達しました。 中国が30%を出資しており、事実上の拒否権を持っています。
ADBとAIIBは敵対しているようにも見えますが、事業によっては両者が協調融資することもあります。
まとめ
就職活動や、会社の昇進試験に向けて、最近の時事・経済キーワードをしっかり理解しておきましょう。
本記事で解説するキーワード
・Libra
・TPP11
・G20
・通貨スワップ
・タックスヘイブン(租税回避地)
・米中貿易摩擦
・邦銀の海外事業展開
・保護主義
・アジア開発銀行(ADB)とアジアインフラ投資銀行(AIIB)
本記事に関連するおすすめの書籍
本ブログでは、就職活動や、会社の昇進試験に役立つ最近の時事・経済キーワードを紹介しています。