日々目まぐるしく状況が変化するVUCAの時代、ビジネスマンとして生き残るには問題解決力/課題解決力が必要です。
しかし「問題解決力/課題解決力とは?」「問題解決力/課題解決力を高めるにはどうしたら良いのか?」という疑問に体系立てて答えられる人は少ないです。
「問題解決」「課題解決」「コンサルタントの技法」の本を読み漁り、実務でも10年以上問題解決力/課題解決力に携わっている私が、この疑問に一つの回答を導き出しました。
問題解決力/課題解決力とは?
(分析する力 + 人を動かす力)× 普段からの心構え
問題解決力/課題解決力は、
- 目の前で起きた問題/課題を正しく分析する力
- 分析の結果導いた対策を実行するために人を動かす力
- この2つの力をいざという引き出すための普段からの心構え
3つの要素から成り立っています。
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分析する力を高めるには?
本当の課題は目の前には無い
目の前で問題が起きた時、起きた現象だけを見てはいけません。起きた現象はあくまでも結果です。結果が起きる原因がその裏にあります。まずはこのことを心に深く刻みましょう。
一つ例を挙げます。あなたに遅刻の多い部下がいたとします。あなたならどのように対応しますか?
当然ですが「遅刻しないように叱責する」は最悪です。それで解決するのであれば、部下は初めから遅刻などしないでしょう。
まずは「遅刻が多い」という原因・背景を考えましょう。
考えられる原因や背景
- 朝に弱い体質→血圧が元々低い?
- 夜寝る時間が遅い→残業が多い?夜更かししてる?
- 遅刻しても良いと思っている→責任のない仕事ばかりさせてる?
- 睡眠の質が悪い→寝酒をしている?
- 寝つきが悪い→仕事や人間関係のストレス?
少し想像してみただけでも、いろいろな可能性が浮かび上がってきました。本当の原因はこの中のどれかかもしれないし、この中には無いかもしれません。
叱責しただけでは、夜更かしは治らないし、人間関係のストレスは無くなりません。
三現主義は2流、1流は仮説から始める
製造業の世界では「三現主義」という言葉が有名です。「現場、現物、現実」の3つをまとめたもので「机上の空論ではなく、この3つを直視せよ」という古くからの格言です。
この三現主義自体は素晴らしい考えですが、どんな薬にも副作用があるとおり、三現主義も万能ではありません。
三現主義には「目に見えないものは認識できない」という副作用があります。
一つの例を挙げます。食品工場の製造ラインでとある機械が壊れてしまったとしましょう。この時に三現主義に則って調査を始めると、機械のどこが故障したのか、点検票のチェックはちゃんと入っているか、その時に作業者はどこにいたかなどの目に見えるものは明らかになります。
しかし一方で、三現主義に傾倒しすぎると、目には見えないものを軽視してしまいます。
三現主義で見逃しなもの
・機械に対する作業者の意識
・作業に対する、作業者のプライド
・作業者の常識レベル
そこで、三現主義を発動させる前に、仮説をありったけ書き出してみましょう
仮説
- 作業者にやる気が無いのかもしれない
- 点検票をつけてるけで、本当に点検してないかもしれない
- 点検項目が不十分かもしれない
- 点検の頻度が不十分かもしれない
- そもそも、機械が作業に合っていないのかもしれない
このように仮説から始めると、三現主義では拾いきれない可能性を見つけることができます。
上の程度の仮説なら、現場に向かう道の途中でも考えることができます。是非とも仮説から始める1流のビジネスマンに成長してください。
Why Not Yet?の視点を持て
有名なフレームワークに5W1Hというものがあります。
- What:何が
- Who:誰が
- When:いつ
- Where:どこで
- Why:なぜ
- How:どのように
このフレームは、問題が起きた時の分析にもよく使われますが、実はこれだけでは不十分なのです。
ここに足すべきは
Why Not Yet「なぜ、いまできていないのか?」の視点です。
一つの例を挙げます。先の例に挙げた食品工場の機械の故障の件、その後に無事に原因究明が終わり、対策を決定しました。しかしその1か月後にまた同じ事象が発生してしまいました。
まずは5W1Hでこれを整理してみましょう。
- What:何が→食品工場の機械A
- Who:誰が→無人ラインなのでなし
- When:いつ→前回の1か月後
- Where:どこで→食品工場の製造ライン
- Why:なぜ→前回決まった対策が行われていなかった
- How:どのように→前回と同じように再発した
いかがでしょうか?
「Why:なぜ→前回決まった対策が行われていなかった」がなんだか核心っぽいのでこれに対策を打とうと思います。例えば「担当者を決めて対策を確実に実行する」
確かにそれっぽいですが、これでは、他の人が似たような故障を経験したときに、また対策のし忘れをしてしまうかもしれません。
つまり、これでは表面的で核心を修正できていないのです。
そこで考えるべきが、Why Not Yet「なぜ、いまできていないのか?」の視点です。すると、いろんな可能性が浮かび上がって来ます。
Why Not Yetの視点での分析と対策
- 対策会議で担当が不明確だった→対策会議のフォーマットに担当者を明記する
- 担当者は対策会議に参加しておらず、上司からの又聞きだったので他人事だと思った→上司の仕事の振り方の教育を実施する
いかがでしょうか?Why Not Yetの視点を持つと、より本質を見抜く力が養われます。
3つの勇気を持て
前述したとおり、仮説から始めることが分析力を上げるコツだと紹介しましたが、この仮説に関して、同時に以下の3つの勇気を持ちましょう。
3つの勇気
・仮説を持つ勇気
・仮説を捨てる勇気
・捨てた仮説を拾い上げる勇気
まず1つ目の「仮説を持つ勇気」について解説します。仮説思考は三現主義を信じる人からすると天敵です。
特に、長くその職場で働くプライドのあるベテラン社員からすると「机上の空論ばっか言ってるんじゃない」と目の敵にされてしまいます。
しかし、ここで負けてはいけません。三現主義に傾倒しすぎる副作用は前述した通りです。
「三現主義が大事なのは重々承知です。しかし、これこれこういった可能性も捨てきれませんよね?だからそこを現場にいって調べましょう」と説得しましょう。
次に2つ目の「仮説を捨てる勇気」について解説します。仮説を多く出せることは分析をする上で非常に優秀と言えます。
しかし、その仮説を信じすぎてもいけません。
なぜなら、仮説は無限に生み出せても、(名探偵よろしく)真実はいつも一つだからです。
つまり、仮説を出せば出すほど、仮説が真実であるというヒット率が下がっていくジレンマになります。
せっかく自分が生み出した仮説なので、それを捨てるのは勇気が要ります。特に「これは本命じゃないか?」と思えるようなとっておきの仮説が出来た時、その辛さは一層のものです。
しかし、繰り返しますが、真実はいつも一つです。捨てる勇気を持ちましょう。
最後に「捨てた仮設を拾い上げる勇気」について解説します。一度捨てた仮説が、実はイイ線行ってたということが稀にあります。そんなとき「一度捨てたんだから、過去を振り返らん」と意地になってはいけません。
どうしても、本命の仮説を見つけ出せない場合、頭をゼロベースにして、捨てた仮説をもう一度眺める勇気が必要です。
人を動かす力を高めるには?
問題解決力/課題解決力とは?
(分析する力 + 人を動かす力)× 普段からの心構え
問題解決力/課題解決力を語るのに、人を動かす力が出てくるのは違和感がある人も多いかもしれません。
本章では、なぜ人を動かす力が重要なのか?人を動かす力を高めるにはどうしたらよいかを紹介します。
ロジックで人は動かない
人を動かす力は分析する力と同じくらい重要です。なぜなら、人はロジック(理論)では動かないからです。
想像してみて下さい。あなたの嫌いな上司から仕事を依頼されるとムッとしたり、家で機嫌が悪い時に家族に家事を手伝えと言われると手伝いたくなくなってしまいますよね?
それが人間なのです。
相手がどんなに正しいことを言っても、気分が乗らなかったり、相手が気に入らなかったりすると、人は動かないのです。
危機感ではなく使命感を煽れ
人を動かすテクニックの1つ目は危機感ではなく使命感を煽るというものです。
- 危機感…「このままじゃまずい」という不安や緊張
- 使命感…「私がやってやる」という強い気持ち
危機感はおもにネガティブなこととしてに使われます。仕事であれば「誰かがやらないとマズイ」という状況を経験したことがある人は多いでしょう。
では危機感に襲われたとき、人は動くでしょうか?答えはノーです。ネガティブである危機感に襲われると、人はやらなくて良い理由を探してしまいます。
危機感がもたらす思考
・私がやらなくても他の人がやれば良い
・そんな責任重大なこと、荷が重すぎる
・やらなくても私は困らない
一方で使命感はポジティブなこととして使われます。仕事であれば「一肌ぬぎますか」という状況です。
人は使命感に燃えるとき「どうやろうか?」とは考えますが「やらない理由を探そう」とはなりません。人を動かすには、相手の使命感に訴えることが有効です。
使命感に訴える方法
・あなただからこそお願いしたい
・あなたならできる
・あなたの力を借りたい
このように依頼されたら、悪い気はしませんよね?そして断ろうという考えは自然と頭から消えてしまいます。
3Wで必ず実行させる
「使命感を煽れ」と言いましたが、すべての依頼を使命感で何とかできるとはいかないのが現実です。どうしても嫌な仕事、汚れ仕事というのは存在します。
誰かにそんな嫌な役回りをさせないといけないとき、あなたは大きなストレスを抱えるでしょう。
そして「時間があるときで良いので…」と恐縮のあまり、あいまいな仕事の依頼をしてしまいます。
この仕事のやり方は、残念ながら不正解です。
嫌な仕事は誰だって後回しにしたいのが心理です。「時間があるときで良いので…」なんて頼み方をされたら、どんどん後回しになってしまいます。
ここは、心を鬼にして3Wを明確にして依頼しましょう。
3Wとは
- What:何を依頼するか
- Who:誰に依頼するか
- When:いつまでに終わらせるか
この3Wは、個人間の依頼だけでなく、議事録にも使えます。会議の結果、決まったことを整理するときに、3Wで議事を取ることで、責任の所掌と納期が明確になり、言った言わない問題が無くなります。
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80%を捨てろ
問題を分析して、いざ対策を打つ時にやりがちなミスがあります。それは「提案された対策をすべて実行しようとする」というミスです。
全てを実行するということは、それだけ多くの人や時間、お金が必要になります。そのため、全てを実行しようとすればするほど、人と人との認識の齟齬が広がったり、時間がかかったりしてグダグダになります。
そして最後には「あれ?結局どうなったんだっけ?」となってしまいます。経験のある方も多いのではないでしょうか?
そこでオススメなのが「80%を捨てる」です。
パレートの法則をご存知でしょうか?
パレートの法則とは
「80:20の法則」ともいわれ、「売上げの8割は2割の社員に依存する」といった傾向をさす。
パレートの法則は問題解決にも応用できます。
問題解決におけるパレートの法則
・対策の効果が8割は、2割のアクションでまかなわれている。
完璧主義を目指すより、アクションのうち、肝となるたった20%だけをやれば成果の80%は稼げるのです。これなら、心理的ハードルは低いですよね。
この考え方にはもう1つメリットがあります。それは「もし、対策が的はずれだったとしても、2割しか力を入れていないからダメージが小さい」というメリットです。
どんなに頭を抱えてひねり出した対策でも、見当違いだったということはあります。そんなときに、100%全力で取り組んでいたら大ダメージですが、立った20%しか力を入れていなかったら、かすり傷程度です。
普段からの心構えを磨くには?
問題解決力/課題解決力とは?
(分析する力 + 人を動かす力)× 普段からの心構え
この式にもある通り、いくら分析する力と、人を動かす力があっても、普段からの心構えがゼロだったらゼロになってしまいます。
逆に、普段からの心構えを磨けている人は、どんな困難が目の前に現れても冷静に分析し、情熱的に人を動かして、困難を解決することが出来ます。
本章では、そんな普段からの心構えについて解説していきます。
常識を疑え
これは「分析する力」を鍛えるために有効な心構えです。
この世には、数多くの常識があります。
常識の例
- ゴミを道に捨ててはいけない
- 人をだましてはいけない
- 仕事の進捗を上司に報告しなくてはならない
常識は、世界のルールを定め、人と人の考えのベクトルを合わせる重要な役割を持っています。
しかし、常識だからという理由で思考停止してしまうことは、分析する力が育ちません。
なぜそのルールがあるのか?本当にそのルールは必要なのか?と普段から常識を疑うことで、本質を掴み取る力が養われます。
とくに問題解決の場面では、人の行動の理由が「そういうルールだからそうした」という回答が多く見受けられます。
時代の変化が早い今の時代です。時代遅れのルールがあれば、そのルールは新しくされなければなりません。
反対意見の自分を持て
「分析する力」を鍛える有効な方法として、反対意見の自分を持つという心構えがあります。
反対意見の例
・自分の意見:この仕事は後輩に任せよう
・反対の意見:この仕事は後輩には荷が重いかもしれない
このように、一度自分の心で決めた考えに対して、反対意見を持つ自分を演じてみてください。
すると、自分の世界が広がり、数多くの可能性を想像する訓練になります。
上の例では、まず「この仕事は後輩に任せよう」と考えました。その背景には「これくらいなら出来るだろう」という気持ちがありました。
そこで「任せるべきではない」という反対意見をぶつけます。その背景には真逆の「個の仕事は荷が重いかもしれない」という気持ちがあります。
この2つの反対意見を考慮して、最終的に「後輩に出来そうか聞きながら依頼してみよう」という第三の着地点が見つかります。
後輩が「できる」と言えば任せれば良いし、「できない」と言えばなぜできないのかを聞き出し、指導すればよいのです。
現状バイアスに負けるな
人間は何もしないと、今の心地よい環境や習慣に染まってしまい、そこから抜け出すことがなかなかできなくなってしまいます。
これを行動心理学の世界では「現状バイアス」と呼びます。
- 仕事ではは自分が得意な仕事ばかりを優先してしまったり
- 通勤経路はいつも同じ道だったり
- レストランのお気に入りのメニューばかり頼んでしまったり
心当たりあるかと思います。
「分析する力」も「人を動かす力」も、いまのままの生活を続けていたら、現状バイアスに負けてしまい、鍛えられません。
新たな力を手に入れるには、大きな変化が必要なのです。
そうは言っても、現状バイアスに肩まで浸かっている人が、いきなり行動を大きく変化させることは難しいでしょう。きっと最初の一週間は気合が入って自分を変えようと必死になりますが、1か月も経てばすぐにもとの自分に戻ってしまいます。
いきなり大きく変えようとするから難しいのです。普段から小さな変化を積極的に取り入れる習慣を身につけておけば、いざという時の大きな変化にも対応できます。
小さな変化を習慣化する例
・通勤経路を曜日で変えてみる
・道の花の成長を毎日観察してみる
・レストランで頼んだことないメニューを頼む
一つ一つはほんの小さな変化ですが、普段から変化に慣れているひとは、大きな変化にも順応することができます。
まとめ
日々目まぐるしく状況が変化するVUCAの時代、ビジネスマンとして生き残るには問題解決力/課題解決力が必要です。
しかし「問題解決力/課題解決力とは?」「問題解決力/課題解決力を高めるにはどうしたら良いのか?」という疑問に体系立てて答えられる人は少ないです。
「問題解決」「課題解決」「コンサルタントの技法」の本を読み漁り、実務でも10年以上問題解決力/課題解決力に携わっている私が、この疑問に一つの回答を導き出しました。
問題解決力/課題解決力とは?
(分析する力 + 人を動かす力)× 普段からの心構え
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