外資系コンサルの100個の教えを、東証一部上場企業マネージャーの著者の経験から8個まで凝縮して紹介します。
巷には「コンサルが教える〇〇個の教え」のような本がたくさんあります。大抵の場合〇〇個が多すぎて、新しい教えを覚えたそばから古い教えを忘れてしまいます。「結局何だっけ?」となってしまう方に本記事はおすすめです。
本ブログではビジネスで役立つ知識を発信しています。
課題設定は「誰にどんなメッセージを届けるか」を意識する
仕事のほとんどは、何か課題を解決することです。課題解決のために、まず行うべきは課題設定です。これは、新入社員が習う基本中の基本ですが、その基本ができていないビジネスマンは多いです。
特に、目の前の問題が複雑な場合、安易な着地点ありきで可もなく不可もない対策で終わらせたり、課題解決に取り組むうちにゴールを見失ってしまうことがあります。
実はこのような場合、大抵「そもそもの課題設定が悪かった」ことが原因です。課題が見当違いだったり、関係者全員が腑に落ちていないとき、間違った方向に組織が動いてしまいます。それを防ぐためには「正しい課題設定をする」ことが必要ですが、これが言うは易く行うは難しです。(社会人経験のある方なら理解できると思います。)
そこでおすすめなのが「誰にどんなメッセージを届けるか」を意識して課題を設定することです。
そもそも仕事は、お客さんがいるから存在します。そのお客さんとは、いわゆる最終消費者とは限りません。直属の上司だったり、その上の上司だったり、経営幹部だったり、他部署の人だったり、関係会社の人だったり…逆に、直接の発注者が「真のお客さま」とは限らないということもあります。
今あなたが取り組もうとしている課題は、誰に届けるべきなのか?
まずここをハッキリさせ、一緒に課題解決に取り組む仲間や上司・部下と認識を合わせましょう。もし仮にあなたが届ける相手を間違ったとしても、周りに共有しておけば、誰かがツッコんでくれますので、課題解決の方向性を大きく間違えることはなくなるでしょう。
そして次に考えるべきは「どんなメッセージを届けるか?」です。これは言い換えると「相手が何を求めているか?」ということです。
目標設定のフレームとしてQCD(品質・コスト・納期の英語の頭文字)は有名です。(真の)お客さまはこのQCDの内どれを問題視しているのか?逆にどれなら妥協できるのか?を明確にして、解決策を考えましょう。
ここで注意すべきは「QCDどれも重要、すべて最優先ということはありえない」ということです。
すべてを重要視して全ての不具合を相手にすると、チームは疲弊し、生み出される結果(アウトプット)は中途半端になって、その結果お客さまはそれほど満足しないという、全員がアンハッピーで残念な結果になります。
必ず「何が問題なのか・何を妥協できるのか」を明確にしておきましょう。
ゴールイメージのすり合わせは妥協してはいけない
前章に従って、真のお客さまが明確になり、お客さまが何を問題視していて何を妥協できるのかが明確になった後、次にすべきは「ゴールイメージのすり合わせ」です。
ゴールイメージのすり合わせとは、3W(What、When、Why)の認識合わせです。
Whatは「ゴールイメージ(アウトプット)は何か?」です。
- 展示会で使うパンフレット
- 社内のミーティングに使う資料
- 調査結果を口頭で報告
どんなアウトプットかによって要する労力は変わります。当然、対外的になるほど、多くの労力が必要になります。
Whenは「いつまでに必要か?」です。いわゆる仕事の納期です。
これはうやむやになりがちなので、必ず一番初めに確認しましょう。たいていの場合、お客様自身でさえWhenが明確になっていません。そんなときは「いつまでに必要か、今日中に回答してください」と、納期回答の納期は最低限とりつけましょう。
Whyは「なぜそれが必要か?」です。
前述のWhatとWhenを補う重要な役割を果たしています。Whyが明確になると、WhatやWhanがより鮮明になります。
例えば、Whatが「展示会で使うパンフレット」で、Whyが「新商品をアピールするため」であれば、パンフレットのメインは新商品になります。新商品の魅力やどんな方にアピールしたいのかを調べてパンフレットを作ることで、より完成度・満足度の高いパンフレットが仕上がります。
例えば、Whatが同じく「展示会で使うパンフレット」で、Whenが「今週末にパンフレット完成」で、Whyが同じく「新商品をアピールするため」であった場合、今週末にパンフレットを完成させるためには、いくつかの原案をその2日前(水曜日)に提出し、選ばれた1つを1日前(木曜日)に仕上げ、最後の修正を週末の金曜日に行う。のように時間軸での戦略を考えることができます。
Whyを明確にすることで、仕事のクオリティはグッと上がります。
最後にもう1つ注意すべきは「期待値のズレは早めに調整する」ことです。
もし、相手の期待と現実的な見積もりにギャップがある場合「望んでいるものが期日までに間に合わない可能性があります」と早い段階で伝えましょう。
「自分の無能を認めるようで嫌だ」という方も多いかもしれませんが、期日直前になって「やっぱり間に合いませんでした」という方がよっぽど無能です。
相手の期待値とのズレを感じたとき、早めに警告すると相手はその心づもりでいてくれます。場合によっては妥協点を探したりバックアップを考えてくれる可能性もあります。
もし思いの外スムーズにことが運び、期日通りに期待通りのものが完成した場合「ただの取り越し苦労でした」で笑い話で済みますが、逆の場合はそうはなりません。「一番話したくないことは、一番初めに話さなければならない」ということを肝に銘じましょう。
求められる水準ギリギリを最低限の努力でクリアせよ
これは、実際に手足を動かすプレーヤーにも、プレーヤーを束ねるマネージャーにも当てはまる重要な考え方です。
例えば、あなたが所属するチームのリーダーから「ありったけの情報を集めなさい」と言われたらどうなるでしょうか?
抽象的な指示では芯を食った情報が集まらず、集まった情報を整理するのも大変です。さらには、その情報を集める手間も膨大に膨れ上がるのでチームは疲弊してしまいます。
ではこんなとき、どう行動すべきでしょうか?
前述の3W(What、When、Why)と合わせて効果的なのが、求められる水準を明確にしておくという行動です。
以下のように、松竹梅でレベルを分けてマネージャーとプレーヤーのレベル感を合わせておきましょう。
- 梅:求められる水準ギリギリ
- 竹:求められる水準を超えて満足できる
- 松:大満足。文句のつけようがない
こうすると互いの認識が合うだけでなく、求められる水準ギリギリを超えられる努力の量を見積もることができます。
ここで注意すべきは「松を目指そうとは決して思わない」ことです。一番高いグレードを超えたくなる、自分ならできるはず、とチャレンジしたくなる気持ちは分かります。
しかし現実は、一人の人間が抱える仕事はこれ1つではなく、複数抱えています。そんな中で1つでも松を目指すと残りが梅すら達成できなくなる可能性が高まります。
本当のプロフェッショナルとは、すべての仕事を梅以上で安定して達成することを指します。1つは松だったけど1つは梅すら達成できなかったでは、プロとは呼べません。
情報収集を始める前に、一回立ち止まれ
課題解決のファーストステップは情報収集です。よーいどん、で始めたいところですが、まず一回立ち止まりましょう。やみくもに情報収集を始めても、見当違いの方法では正しい情報は集まりませんし、調査時間も無限に増えてしまいます。
情報収集を始める前に、課題に対してどんな情報ソースを使うか”当たり”をつけましょう。
そもそも一言で情報収集と言っても、ソースは様々です。インターネットでの検索・新聞記事・社内の関係者へのインタビュー・市場アンケート…挙げればきりがありません。無限に近い情報ソースの中から、どうやったら最適な情報ソースを選ぶことができるのでしょうか?答えは、大きく4つのカテゴリに分けて考えることです。
図のとおり縦軸は紙と声、横軸は社内と社外に分けます。すると右上から時計回りに
- 公開資料
- 社外関係者へのインタビュー
- 社内関係者へのインタビュー
- 社内資料
に分けることができます。
この中から、課題解決に有効なカテゴリを選びましょう。カテゴリを選んだら、さらに具体的なソースを考えます。
例えば「公開資料」なら、書籍や新聞・省庁のレポート・論文などがあります。「社外関係者へのインタビュー」なら、最終消費者・卸売業者・投資家・取引先などです。
さらにもう少し具体的な例を挙げましょう。
課題が「スマホゲームの市場規模は今どうなっているか?」であったとします。このような統計的な情報は「公開資料」カテゴリが最適です。業界誌や調査会社のレポートに当たればおそらくかなり楽に情報入手できるでしょう。
しかし課題が「スマホゲームの今後の市場規模は拡大するか?縮小するか?」となると公開情報カテゴリでは難しくなります。「社内関係者へのインタビュー」もしくは「社外関係者へのインタビュー」のほうが向いているでしょう。社内のマーケティング部門や業界に精通したコンサルなどにインタビューすることで、良い情報が入手できると考えられます。
このように、情報収集を開始する前に、どの情報ソースから情報を集めるかを事前検討することは、非常に重要です。
煮詰まったら現場へ行け
課題解決で情報が集まらない、良い解決策が思いつかない、と煮詰まったら、とにかく現場に行きましょう。そして、とにかく現場を観察しましょう。
この行動には大きく2つのメリットがあります。
1つ目は、一次情報に触れることが出来るという点です。自分の五感を使って集めた情報を”一次情報”と呼びます。一方で、他人や集められたデータから得られる情報を二次情報と呼びます。
このうち、二次情報は他人の意図が介入する余地があるので、他人の勘違いや思い込みが情報に入り込んでしまいます。そのため信用度は一次情報よりも低くなります。
現場に行くと、そこで起きていることを自分の五感を使って収集できるので、他人の意図が介入しない、正しい現実の情報を得ることができます。
2つ目は、創造的なアイディアが思いつきやすいという点です。現場で得られる情報は、目・耳・鼻・肌の感覚を使って得ることができます。人は五感が刺激されることで脳の様々な部位が活発に活動します。
そのため、机で腕を組んで考えるよりも、より創造的なアイディアが思いつきやすいのです。
現場観察には2つの注意点があります。
1つ目は、調査対象に介入することなく、ただそこで見ることに徹するということです。調査対象者にインタビューや声掛けをすると、調査対象の日常の流れを邪魔してしまい、いつも起きていることを観察できなくなってしまいます。
また、調査対象者は否が応でも意識してしまうので「良く見せよう」といつもと違う動きをしてしまいます。このような観察対象者への悪影響はホーソン効果と呼ばれています。
2つ目は、ある程度長い時間を掛けて観察することです。1時間程度の短い時間では通常の数分の一程度しか観察できません。せっかく現場に足を運んでも、断片的な情報しか手に入りません。また、繰り返し性のある問題がある場合、目の前で繰り返されることで、問題を認識しやすくなったり、その影響を正しく認識することができます。
著者の経験からすると、現場観察は最低2時間、可能なら1日は使いたいところです。
摩擦を恐れずポジションを主張せよ
情報収集が終わった後は、解決策を考えるステップになります。このとき注意すべきは「関係者との摩擦を恐れてはいけない」です。
情報収集で、課題を解決したいお客さんや自分の仲間にとって都合の悪い(目を背けたい)情報が集まった場合、相手に配慮してそれを隠したり、隠さずとも意図的に解釈を曲げるようなことをしてはいけません。
集めた情報から客観的・論理的にやるべき解決策を、摩擦を恐れずに主張しましょう。
よく有能なビジネスマンの条件として「決断力」が挙げられます。この決断力とは、ポジションを取る勇気です。ポジションを取るとは、つまり事実に対して考えと意見を明確にするということです。
例えば、とある株価の推移のグラフがあり、最近まで右肩上がりに株価が上昇していましたが、先月少しだけ下落したというデータがあったとしましょう。このとき「下落したのは一時的ですぐ上昇に転ずる」か「これからも下落は続く」のか考えを示し、どんな対策を打つべきなのかを明確にすることが、ポジションを取るということです。
ポジションを取ると、当然反対意見の人が出てきます。その人と摩擦は避けられませんが、摩擦を恐れてポジションを明確にしない、もしくは他人のポジションを聞くまで待つビジネスマンは非常に多いです。
このようなポジションを取らない行動は辞めましょう。なぜなら、摩擦を起こさないと良いアウトプットは出せないからです。他人に迎合したり、ポジションをとらない組織は芯の無い・中身の薄いアウトプットしか出せません。すると当然その効果も小さくなります。
電通の行動規範に「摩擦を恐れるな。摩擦は進歩の母、積極の肥料だ。でないと君は卑屈未練になる。」という言葉があります。
解決策を考えるとき、かならずあなたのポジションを主張しましょう。
理論だけでなく感情も使って判断せよ
最近、ロジカルシンキングが流行しており、論理的な思考法こそが正しいという風潮がありますが、これは間違いです。
その理由は2つあります。
1つ目は、感情は過去の経験から導き出されたシグナルだからです。例えば、会議で議論して結論が決まりそうなとき「なんだか嫌な予感がするなぁ」と思ったことは無いでしょうか?具体的に説明することはできないけど、虫の知らせのような直感に近い感覚です。
実はこの虫の知らせは、過去の経験を元に脳が作り出したシグナルでは無いか、ということが脳科学の世界では言われています。人の脳にはAIのように過去の体験から未来を予測する力があります。その予測の結果「このまま進むとまずいことになるぞ」というシグナルが虫の知らせとなって現れるのです。
直感だからと侮ってはいけません。もしこのような良くない感情を持った時は、過去の経験を振り返ってみましょう。似たような経験をしているかもしれません。その経験を思い出せれば、決断を考え直すことができるかもしれません。
2つ目は、実行するのは感情のある人間だからです。ロボットであれば理論的に正しい行動を取りますが、人間はそうはなりません。いつもお世話になっている人からの頼みなら、ちょっと不都合でも引き受けますし、嫌いな相手の依頼なら、どんなに正しくてもやる気が起きない。それが人間です。
そのため、自分と相手の感情をよく観察することが重要です。イライラしているなと思えば、議論は避けた方が良いかもしれません。不仲な人がチームにいればメンバーを見直す必要があるかもしれません。
理論的に正しいからみんなやるべきだと、期待するのは間違っています。理論+感情の両方を使いましょう。
視野を広げる=時間・空間を広げる
課題の原因を探ったり解決策を考えるときに「視野を広げましょう」と良く言われます。しかしどうやったら視野を広げることが出来るかを教えてくれる人はそう多くありません。
視野を広げるとはつまり、時間・空間を広げて課題を観察するということです。
時間は、大きく分けると過去・現在・未来の3分割ができます。さらに過去も去年なのか、5年前なのか、10年前なのかと細かく分けることができます。このように時間軸を細かく分けていくとヒントが得られることは多いです。
例えば「なぜ日本からはGAFAのような企業が生まれないのか?」という問いがあったとしましょう。たしかにここ数年、日本から世界を席巻する企業は生まれていません。しかし、過去を振り返ってみましょう。すると高度成長期には自動車や家電の分野でメイドインジャパンの高い品質で世界を席巻する企業は存在していました。
ここ数年の歴史だけを考えると「日本人にはイノベーションがないからだ」と悲観的で建設的でない方向に議論が進んでしまいそうですが、高度成長期まで時間を広げると、日本に世界を席巻するポテンシャルはあるということが分かります。ポテンシャルはあるがそれが活かせていないからではないか?という方向に検討を進めることができます。
空間は、自分から近いところから遠いところまでを指します。一番近いところは自分自身、自分の心の中です。遠いところは世界・最近のビジネスでは宇宙空間まで広がります。
先ほどの「なぜ日本からはGAFAのような企業が生まれないのか?」という問いを空間的に広げて考えてみましょう。確かに日本からGAFAのような企業は生まれていませんが、GAFAはアメリカの企業なので、アメリカ以外の全ての国でGAFAは生まれていません。すると、この問いは「なぜアメリカはGAFAを生み出せたのか?」と問いを定義しなおす必要が生まれます。
このように視野を広げる(=時間・空間を広げる)ことで、課題そのものの誤りに気付くこともできます。
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